サントリーのCMに使われたマーラーの曲について

自分が考えるサントリーの昭和50年代の名CMは3つあって、一つは、雨の中を子犬が街を走り抜けるCM、ダバダバダバダという音楽とともに物凄い有名。30代以上ならほとんどの人が、ああ、あのCMねと分かるくらいにね。

もう一つは松田聖子が歌っているバックミュージックを背景に、、アニメのペンギンが出てくるCM。何しろ松田聖子の人気は凄かったから、これも一世風靡したね。

最後は、今日語りたいもので、砂漠を旅するフランスの象徴詩アルチュール・ランボー
のCM。これは、上の2つに較べ、知る人ぞ知るCMで、ハイセンスだったね。

サーカスの道化とともにランボーが歩いているだけなんだけど、バックにかかっていた音楽が独創的。グスタフ・マーラーの声楽付き交響曲大地の歌」の中の第三楽章「青春について」を使っていたから。当時まだ、マーラーは一般的じゃなかったけど、この曲をきっかけにか、ひそかなブームになった。

この「大地の歌」は中国の李白などの詩を脚色して声楽をつけた交響曲 なんだけど、これが、西洋人のけったいなオリエント趣味の、はなはだグロテスクな曲になっている。でもこれが、もの凄く面白い。

第一楽章「大地の悲しみに寄せる酒の歌」(李白の詩が原作)

第二楽章「秋の寂しさ」(原作は分からない)

第三楽章「青春について」(李白の詩が原作)

第四楽章「美について」(李白の詩が原作)

第五楽章「春に酔える者」(李白の詩が原作)

第六楽章「告別」(王維の詩が原作)

この楽章と題名を書いただけでも、面白そうでしょ。奇数がテノール(男性高音)、偶数(女性低音)の独唱になっている。

李白の詩をもとに書かれているものが多いので、酒ばかり飲んでいる曲が多いね。CMで使われたのはこの交響曲の中でも陽気な曲だったね。酒を楽しく飲もうということかな。まあ洋酒会社のCMなんだからこれは普通かな。

自分がつっこみを入れたいのは、第四楽章と第六楽章、

第四の曲想は、池のほとりに乙女たちが花を摘んでいる最中、近くを見目麗しい貴公子が通りすぎていくシーンとのことらしいのですが、

貴公子が通り過ぎ去る場面にかかる音楽が、チンドン屋みたいに登場して、これがくどいのだ。これが憧れを表現する音楽なのかな?可笑しい感性だな。

そして最後の第六楽章の告別、これは王維の詩で、高校の漢文でも習うくらい有名な詩を脚色したもので、この交響曲の長さは60分くらいのうち30分くらいがこの楽章にかけられている。

王維の短い詩をえんえんと演奏する。曲想は故郷に隠棲しようとする友達との別れを曲にしている。

日本人なら別れる時は、やあそれではと軽やかに別れるのだけど、またこの王維の詩もさらっとしたものなんだけど、このマーラーの曲はくどいのだ。とことん友との別離の哀切さを歌い上げる。これはまた秀逸なんだけど。

最後になるにつけ、エーリッヒ、エーリッヒ、日本語訳で永遠を連呼する。序序に言葉が小さくなっていくのだけど。何回も連呼すれば、日本人としては有情とうものが浮かぶとは思えないのだけど、西洋人はゴリ押しするんだね。で何か分からない味わいをだしてしまうから面白いね。でも、全体的に見れば中国的になっているのだね。ここは特筆すべきだね。